製造現場では「紙と鉛筆こそ正義」「ウチはこの方法で数十年やってきた」と堂々と言うおじさんがいます。そんな老舗企業が「さあ、DXだ!」と意気込み導入した新システム。ところが導入後も誰も活用せず結局旧態依然…。実は日本企業の約7割がDXで期待した成果を得られないと言われています。この結果、「やっぱり昔ながらの方法でいいじゃん」と皆で肩をすくめる…そんな失敗シーン、あなたの会社でも見覚えありませんか?例えばある製造業では、生産管理システムを入れ替えた途端「操作が複雑すぎる!」と現場大混乱。結局、従業員は古い帳簿と併用する二重作業に逆戻り。まさに「引っ越し先に家具も何もない真新しい家なのに、荷物は旧居に置きっぱなし」というDX失敗あるあるです。
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よくある失敗パターン
DX失敗にはパターンがあります。代表的な現場の様子を3つ挙げてみましょう。
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パターン①:無計画なトップダウンDX – 経営陣が「うちもDXしよう!」と大号令をかけ、外部コンサルや最新システムをガツンと導入。しかし肝心の現場が蚊帳の外。例えば製造業のある企業では、生産管理システムを丸ごと刷新したものの、現場担当者の意見は無視されたために操作が難解になり、結局従業員は旧システムと紙の記録を併用する二重業務に戻ってしまいました。結果、新システムは形だけの“置き物”状態。上層部にとっては華々しい導入でも、現場にとっては単に仕事が増えただけという痛いオチです。
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パターン②:アナログこそ至高!現場保守派 – 逆に、どんなに豪華なITツールを持ってきても「そんなの必要ないよ」という現場勢力。長年の経験や慣習に誇りを持つベテラン社員は、「機械に判断は任せられない」「今の方法で十分だ」という言い訳を声高に主張します。物流会社では配送最適化AIを入れたものの、熟練員がAI提案を無視して旧来のやり方に固執し、導入効果がほとんど出なかった例も報告されています。いわゆる「うちの現場はお前らの出した数字じゃ動かねえよ!」というスタンスです。このパターンでは、経営側には「歩留まり改善」という夢が見えていても、現場側には「現金屋さんだと思われてたまるか」というプライドが立ちはだかるのです。
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パターン③:泥縄(どろなわ)DX – 大義名分も目標もないまま、手当たり次第にプロジェクトを乱立させるパターン。要するに、やることだけ決めて検証しない。結果、社内に山ほどタスクが並び、どの施策が効果につながっているのか誰もわからなくなります。NTTデータの調査でも「立ち上げはするが振り返りができず、成果ではなく工数が山積み」という声が上がっています。しかも一度「DXやります」と宣言すると、責任者も「失敗」と言い出しにくい空気が組織に蔓延し、誰もプロジェクトを畳めなくなることも。結局、「とりあえずやってみたから終了」の烙印を押せずに、引き返せないままに。あちこちで中途半端に取り組んで肝心な改善もできず、気づけばDX担当者は燃え尽き…という笑えない結末です。
なぜ失敗に気づけなかったのか
ではなぜ、こうしたDXの「コケ」を社内で見抜けなかったのでしょうか。一つは目的や指標の欠如です。多くの企業は「とにかくデジタル化!」と意気込むものの、社長室でDXの定義やゴールを明確化していません。つまり、全社共通のKPIがないまま現場にまかせてしまい、現場では「これ、効果あるのかな?」と誰もモニタリングしません。結果、成果が上がっているのか不明瞭なまま施策が慣性で続きます。NTTデータによれば、目標設定が曖昧でプロジェクト後の振り返りがないため、効果を検証できないまま追加投資だけが膨らむ例が少なくないそうです。
また、組織的な分断も見逃せません。経営層はDXの必要性をわかっていても、ミドルマネジメント層にその必要性が伝わっていなかったり、理解していても現場の状況を知らずに空回りするケースがあります。実際、ある大手企業では「IT導入の最大の敵は中間管理職の消極的抵抗だ」と言われるほど、現場と経営の温度差が失敗の要因になったと言います。評価制度でも、これまで通りの作業こなす方が簡単に点数が取れる場合、勇敢に新ツールを試そうという社員は増えません。「うちの仕事はちゃんと前と同じようにやっておかないと」と無意識に旧態依然を選択する要因も大きいのです。要は、部門ごとに目線がバラバラで、効果が見えないなら「別にこのままでも…」と誰も危機感を持てなかったわけです。
もしやり直せるなら
過去のミスから学ぶなら、やり直しのポイントは明白です。まず現場を巻き込むこと。コマツの事例が示すように、初期のERP導入失敗を経て「現場主義」を徹底し、IT部隊と現場作業員が共同で設計に関わる体制を築いたことで見事V字回復を遂げています。これをパクれば(?)、経営から降ってきたあいまいな「DX命令」も、現場のリアルな声を反映した案になり、実行性が大きく高まります。
また段階的に小さく試すことも重要です。事例にもあるように、何十億もつぎ込む前に、スモールスタートで効果を確認しつつ投資を拡大するアジャイル的手法が奏功しました。セブン&アイではPOS刷新の大失敗から、少人数のチームで段階的に施策を重ねる方法に転換し、オムニチャネル戦略を成功させています。段階的アプローチなら社内の理解も得やすく、万一うまくいかなくても被害は小さめ。
さらに、ゴールと指標を最初に固めておくことです。東芝のIoTプロジェクトではROIが不明確だったため、成果測定ができずに計画が宙に浮いてしまいました。これを避けるためにも、何をもって“成功”と言えるのか前もって定義し、KPIやモニタリングの仕組みを用意すべきです。NTTデータも「成功状態と計測方法、具体的KPIを定義し、定量的にチェックできる仕組みを作る」ことを推奨しています。
最後に、人材育成や組織体制にも手を入れたいところです。グローバル展開を進めるファーストリテイリング(ユニクロ)も、一度はIT統合で苦戦しましたが、デジタル人材を積極採用し投資の優先順位を明確化してV字回復しました。要するに、おじさんたちの頑固さも教育や新血投入でカバー。必要な人材に権限を与え、変革リーダー(CDOなど)を立てて組織全体を引っぱっていく意識があれば、「前からこれ」壁は少しずつ崩せます。
まとめ
DXの失敗例を振り返ると、「現場は冷めてるのに机上は熱狂」といった悲喜劇がよく見えてきます。しかしだからこそ、外野の目線では「そんなに簡単に形骸化するなんて、ちょっと先を読み切れてないんじゃない?」と一笑に付せるわけです。大切なのは失敗を糧にすること。実際、失敗した会社ほど成功へのヒントを掴んでいます。例えば、「技術を入れるだけじゃ意味がない。人と組織を変えるプロセスこそがDXだ」という視点に立ち返った企業ほど後々成果を出しています。
要は、「前からこれでやってるから無理」と決めつけるのではなく、「実はもっとラクになるかも?」と現場からも思ってもらう変革を目指したいもの。勇気を持って小さな一歩を踏み出し、少しずつ“前例”を書き換えていけば、いつか「あれ、思ったより悪くなかったね」と笑える日も来るでしょう。失敗を責めすぎず、ちょっとしたジョークに転換しつつ前向きに学んでいきましょう。

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